泥亀すっぽん)” の例文
旧字:泥龜
と、指令をいうような沈痛な語気の折竹に、ロイスもカムポスも唖然あぜんとなってしまった。泥亀すっぽんでさえ、精々十尺とはもぐれまい。
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
肝魂きもだま泥亀すっぽんが、真鯉まごい緋鯉ひごいと雑魚寝とを知って、京女の肌をて帰って、ぼんやりとして、まだその夢の覚めない折から。……
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新聞記者などが大臣をそしるを見て「いくら新聞屋が法螺ほら吹いたとて、大臣は親任官、新聞屋は素寒貧すかんぴん、月と泥亀すっぽんほどの違いだ」などとののしもうし候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
かめの中の泥亀すっぽんを採るようなものと思っていたのがまちがいで、思いきや、二龍山から花和尚、また青面獣の楊志ようしなんどの、意外な助太刀があらわれましたために
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
も一人の平三は、車力しゃりきの親方の子で『菅原伝授手習鑑すがわらでんじゅてならいかがみ』の寺子屋、武部源造たけべげんぞうの弟子ならば、こいつうろんと引っとらえと、玄蕃げんばんが眼をきそうな、ひよわげで、泥亀すっぽんに似た顔をしている。
そうしてその結果を綜合してみると、その泥亀すっぽん抜きの犯人というのは又、意外千万にもY子の妹のT子という美しい女学生に違いないという目星が付いたので、サア事がややこしくなった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかしそこまで突きとめているとあれば、かめの内の泥亀すっぽんを捕るようなもの。なんの造作ぞうさもありますまい
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「また、オジチャン、泥亀すっぽんをとるんだろう。だけど、坊やだってそうは出ないよ」
「太平洋漏水孔」漂流記 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「首の座となってから、泥亀すっぽんみてえに手を合せたって追いつくもんか。きれいに往生しやあがれ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
泥田の泥に酔っぱらったように、田の底から、露八は、泥亀すっぽんみたいな黒い顔を上げて、喚いた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ですから、こういっておくんなさい。——近いうちに法月様が江戸へきて、ぜひいろいろなご相談がある、それには旅川周馬なンて、亀の子だか泥亀すっぽんだか分らねえ奴の屋敷では工合が悪い——と、ようがすか」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庄次郎は、泥亀すっぽんみたいに、をあわせた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)