“沢地(たくち)” の例文
が、その冬(ふゆ)が過(す)ぎ去(さ)ってしまったとき、ある朝(あさ)、子家鴨(こあひる)は自分(じぶん)が沢地(たくち)の蒲(がま)の中(なか)に倒(たお)れているのに気(き)がついたのでした。
それ以来満洲の豚と怪物とは離せないようになった。この薄暗い、苔(こけ)のように短い草ばかりの、不毛の沢地(たくち)のどこかに、あの怪物はきっと点綴(てんてつ)されるに違ないと云う気がなかなか抜けなかった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、思(おも)いました。それで彼(かれ)は目(め)を瞑(つぶ)って、なおも遠(とお)く飛(と)んで行(い)きますと、そのうち広(ひろ)い広(ひろ)い沢地(たくち)の上(うえ)に来(き)ました。見(み)るとたくさんの野鴨(のがも)が住(す)んでいます。
可哀(かわい)そうに! この子家鴨(こあひる)がどうしてお嫁(よめ)さんを貰(もら)う事(こと)など考(かんが)えていたでしょう。彼(かれ)はただ、蒲(がま)の中(なか)に寝(ね)て、沢地(たくち)の水(みず)を飲(の)むのを許(ゆる)されればたくさんだったのです。