水槽すいそう)” の例文
そこからまた同じ裏道づたいに、共同の水槽すいそうのところに集まる水くみの女どもには、目もくれずに、急いで隠宅へ引き返して来た。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その広い壁のところどころに、大きな水族館の水槽すいそうののぞき窓みたいに、横に長い硝子板ガラスばんのはまった窓があるのだった。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かれはこの場所のまんなかに、水槽すいそうの階段のうえに、くずれるように腰をおろして、石の丸味のところへ頭をもたせた。
景色や風致がどうであるというのではなくて、何かしら学術上の研究資料の供給所として、あるいは一つの実験用水槽すいそうとして保存してほしいのである。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
水槽すいそうに小さな穴があいて、そこから水が漏るように、彼の中から、なにかが少しずつ漏れ、漏れただけべつのなにかが加わってゆく、というようなぐあいだった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そのころ、水槽すいそうをそなえた海獣のカラルのまえで、なにやら馴育師トレイナーから説明を聴いているのが……、というよりもはなはだしい海獣の臭気に、鼻を覆うていたのが折竹孫七。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
超特急「つばめ」の大機関車が不思議な形の水槽すいそうを従えつつその動輪を巨大なるピストンによって廻転しつつ動いて行く形こそは、どれだけ近代人をよろこばせ子供の心を感動させているか知れない。
……正三は樹蔭こかげ水槽すいそうの傍にある材木の上に腰を下ろした。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
その広い壁のところどころに、大きな水族館すいぞくかん水槽すいそうののぞき窓みたいに、横に長い硝子ガラス板のはまった窓があるのだった。
三十年後の東京 (新字新仮名) / 海野十三(著)
テーブルの横の台の上に、ガラスの水槽すいそうが一つ置いてあって、その中にただ一匹の美しい洋紅色をした熱帯魚が泳いでいた。ベタ・カンボジャという魚らしい。
試験管 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
水槽すいそうに小さな穴があいて、そこから水が漏るように、彼の中から、なにかが少しずつ漏れ、漏れただけべつのなにかが加わってゆく、というようなぐあいだった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
馬籠は飲用水に乏しい土地柄であるが、そのかわり、奥山の方にはこうした山地でなければ得られないような、たまやかな水がわく。といを通して呼んである水は共同の水槽すいそうのところでくめる。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
素人しろうと考えですがね、例えば河馬かばの居る水槽すいそうの底深く死体が隠れていないかおしらべになりましたか」
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ラスボラ・ヘテロモルファという魚は、時には活発に運動しているが、また時によると二三十尾の群れが水槽すいそうの一部に集まったままじっとして動かないでいることがある。
破片 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
医薬のついえだけでも分に過ぎた重荷だった、それで僅かでもその費えを助けようと、伊緒は夜仕事に紙漉かみすきのわざをならい、凍てる夜な夜な、水槽すいそうの氷を破ってしごとをはげんだ。
日本婦道記:春三たび (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
落合方面から馬籠の町にはいるものは、旧本陣の門前まで出ないうちに街道を右に折れ曲がって行くと、共同の水槽すいそうの方からはしって来る細い流れの近くに、その静の屋を見いだすことができる。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
百貨店の花卉部かきぶに熱帯魚を養ったガラス張りの水槽すいそうが並んでいる。暑いある日のことである。
試験管 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
水槽すいそうらしいが、僕をどうしようというんだろう。水浴をさせるつもりでもあるまいに……)
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
水槽すいそうに鼻をさしつけてのぞいている人間の顔を魚が見たらどんなに見えるであろう。さだめて恐ろしく醜怪な化け物のように見える事であろう。見物人の中には美人もいた。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
こんな大きな水族館すいぞくかん水槽すいそうはないであろう。
三十年後の東京 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たとえば長方形の水槽すいそうの底を一様に熱するといわゆる熱対流を生ずる。
とんびと油揚 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「艇長さん、食料品がすこし心細くなったよ。直ぐ引返すとしても、帰りの路は半分ぐらいに減食げんしょくしないじゃ駄目だ。ことに水が足りやしない。なにしろ一つの水槽すいそうの中に、記者の佐々おじさんが隠れていたんだものねえ。あはははッ」
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)