毒蛾どくが)” の例文
冬なのに蛇トカゲの爬虫類はちゅうるいがうようよ這いまわり、毒蛾どくが、サソリ、赤蟻あかあり、種類も知れぬ毒虫が群れをなして兵の眠りまで苦しめる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんでゆめのもんですか。みんな事実じじつですよ。この公園こうえんには、くろ百合ゆりはないたり、不思議ふしぎ毒蛾どくががきたりしたために、人間にんげん大騒おおさわぎをしていますよ。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちに二三人のアーティストたちは、押虫網でその小さな黄色な毒蛾どくがをつかまへてしまひました。
毒蛾 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「みつばちさん、そんなら、一昨夜さくや、たくさんきたは、毒蛾どくがなんでしょうか。」といました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一匹の毒蛾どくがは、数千の卵を生みちらす。数千の卵は、また数十万の蛾と化して、民家の灯、王城の燭、後閣の鏡裡きょうり、ところ、きらわず妖舞して、限りもなく害をなそう。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新聞にも盛んに出てゐましたが、あの毒蛾どくがです、あれが実にひどくあの地方に発生したのです。
毒蛾 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
すると、一昨夜さくや、このみやこおそった毒蛾どくがが、どこかにのこっていたとみえて、そのおとこしたのです。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「はい、誠にお気の毒でございますが、当地方には、毒蛾どくががひどく発生して居りまして、夕刻からは窓をあけられませんのでございます。只今、扇風機を運んで参ります。」
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
また生来十二、三の少女の頃から、お蝶は、人のように夜を気味わるがらないたちでもありました。あくまで、お蝶はやみに生きる美しい毒蛾どくがのような生まれ性なのかも知れない。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無数の針は音なき風となって、ピラピラと飛んできてもはだにつき立つほどではないが、あたかも毒蛾どくがこなのように身をしたので、ふたりはあッ——とおもてをそむけた。その一しゅんだ!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やっぱり毒蛾どくがの話です。多分毒蛾の鱗粉りんぷんを見てゐるのだと私は思ひました。
毒蛾 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)