欝憤うっぷん)” の例文
それをどうにかして晴らそうと思って、たくさんの戯作をつくり、そのなかで自分の欝憤うっぷんを晴らそうともしたのでした。
平賀源内 (新字新仮名) / 石原純(著)
君はまた余に惺々しょうじょう暁斎ぎょうさい画譜がふ二巻を呉れた。惺々暁斎は平素ねこの様につゝましい風をしながら、一旦酒をあおると欝憤うっぷんばらしに狂態きょうたい百出当る可からざるものがあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
と、里人さとびとはにわかにほッと安心したばかりか、日ごろの欝憤うっぷんをはらしたようにどよみ立った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同時にすべての責任が自分の今突いている竹の洋杖ステッキにあるような気がした。彼は例のごとくへびの頭を握って、寒さに対する欝憤うっぷんを晴らすごとくに、二三度それをはげしく振った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その欝憤うっぷんを今ここで晴らさんが為に、わたしが再び読者諸君を化かしたわけではない。
半七捕物帳:52 妖狐伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
図らずも夫文治が赦免という有難き日に親のかたきを知り、多年の欝憤うっぷんらさばやと夫と共に旅立ちして、敵討かたきうち旅路たびじを渡る山中にて、なんの因果か神罰か、かゝる憂目うきめの身となりしぞ
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
日頃の欝憤うっぷんなどは顔色にも現わさず、努めて機嫌のいい調子をつくり
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
誰にも彼にも欝憤うっぷんらさず知らさず居らるるなるべし、ええ親方は情ない、ほかの奴はともかく清吉だけには知らしてもよさそうなものを、親方と十兵衛では此方こちが損、おれとのっそりなら損はない
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「やるか? 僕も欝憤うっぷんが溜まっている」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
幕府方への欝憤うっぷん復讐ふくしゅう
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
健三は腹が立ちさえすれば、よく実にとか一番とか大とかいう最大級を使って欝憤うっぷんの一端をらしたがる男であった。こんな点になると細君の方はしぶとい代りに大分だいぶ落付おちついていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、味噌煮唄でもうたって、欝憤うっぷんをやるだけのものになってしまう。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)