横浜はま)” の例文
この尾行者のあるのに気がついたのは、横浜はまの銀座といわれるあのにぎやかな伊勢佐木町いせざきちょう夜食やしょくり、フラリと外へ出た直後のことだった。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
警察屯所から命令されて来た犯人の顔を、直接見て知っているのは、田辺刑事だけで、横浜はまの警察屯所にも一人もいなかったからである。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今では横浜はまへ往って居りやすが、何うも身上しんしょうを大きくするくらいの奴は無理な算段でもって店を明けるような事が有ろうが、何うもへゝゝゝゝ
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
四五十分経って下りて来た小歌に、一番にどこの人と聞けば、横浜はまの方でお両人ふたりですと云うにやゝ安心した。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
横浜はま積込つみこんだ時の苦労を逆に繰返して、飛んでもない遠方から掘り出すようにしいしい、機関室へ拾い集めるのであったが、その作業を初めると間もなく
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
横浜はまの外人たちは、ソヴエットの経済スパイだろう、なんて言っていますわ……さっきのウラニウムのことですけど、輸出禁止の法律がないのをいいことにして
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
俺がいよいよ横浜はまへ立つという朝、出がけにお前の家へ寄ったら、お前が繰り返し待ってるからと言ってくれた、それを俺はどんなに胸に刻んで出かけたろう! けれど
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
も一度美濃善の暖簾のれんを揚げたいと思ッてるんだが、親類と言ッたッて、世話してくれるものか、くれないものか、それもわからないのだから、横浜はまへ進んで行く気もしないんで……
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
「ばかに早えな。横浜はまの人間は違ったものだ」と、半七は寝床のうえに起き直った。
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かねがね横浜はまはたいそうな景気だと聞いていたけれども、ほんとうにその通り。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
暦の上では、もう初秋だとは云ふものの、まだ残暑がきびしく、風流を心にたゝむ十数人の男女を打交へた一団にとつて、横浜はまの熱閙を避けた池廼家いけのやの句筵は、いくぶん重くるしさを感ぜしめた。
薄暮の貌 (新字旧仮名) / 飯田蛇笏(著)
横浜はまの子が智慧ちゑのはやさよ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「ああ、ちょっと」と私は呼びとめ、「いいかい爺さん。五千円をつかんだら、直ぐ横浜はま出発たつんだ。娘さんも連れて行くんだぜ」
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「分った、分った、それならば、それでいい。折角、横浜はまへ来た大官を、利用せずに帰しちゃつまらんからの」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実はね、横浜はまからこちらへ来るとすぐつくだへ行って、お光さんの元の家を訪ねたんだ。
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
「どうも横浜はまじゃ、警察がわーがしたからね。つい秘密ないしょにしちゃったんで……」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ヘイ・ユウ、これでも横浜はまッ子だい。見損なうなよ」
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「それじゃあ横浜はまかな」
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「この辺で、一件の話を聞かせてくれてもいいじゃないか。あの倉庫から搬び出した中身のこと、それからお前が横浜はまへ流れてきた訳など」
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
太陽のもと、ことに埠頭ふとう船渠ドック、荷馬車、お茶場工場などの、騒音とほこりと人間の奔影ほんえいとが錯綜さくそうと織られている横浜はまの十字街を、ゆうべの芸妓おんなや、雛妓おしゃくを引っぱって
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝、まだ朝霧や紙屑がほの白い横浜はまの町を、二人きで波止場へ飛ばしてゆく四、五台を見る。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)