概念がいねん)” の例文
この時私は始めて文学とはどんなものであるか、その概念がいねんを根本的に自力で作り上げるよりほかに、私を救う途はないのだとさとったのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
斯くてお隣りへ入った泥棒は一もつも得なかったが、浩二に梁上りょうじょう君子くんし概念がいねんを与え、家のブル公の声価を四隣に高からしめた。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
みぎはなしすゝめるについて必要ひつようなのは津浪つなみ概念がいねんである。津浪つなみ海嘯かいしようなる文字もんじがよくあててあるがこれは適當てきとうでない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
大河君は、普通ふつうの塾生とはちがって京大を出た人だよ。専門は哲学てつがくだ。しかし概念がいねんの哲学者じゃない。孔子こうしとかソクラテスとかいった型の、いわゆる哲人だね。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
いろ/\の噂をかき集めて、高力左近太夫その人の概念がいねんと島原藩の空氣を呑込むと、平次は恐れる色もなく、西久保上屋敷御長屋に、用人川上源左衞門を訪ねました。
かく現代では新しいという事が概念がいねんになり常識になったから少しも新しくはありません。
新時代女性問答 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
大人おとなの世界にあるような、きゅうくつな概念がいねんにとらわれないでいいからだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
流行の心理は模倣もはう憑依ひようい概念がいねんを以てりつすべからず夏の都会とくわい
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
一平 つまり今の新しい女はそんな詩的な概念がいねんでなく、もっと実質的に入ったんだろう。
新時代女性問答 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
われ/\は地震ぢしんかんじた場合ばあひ其振動そのしんどう緩急かんきゆうによつて震原距離しんげんきより概念がいねんつようになる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
お鶴の想像してゐた御用聞といふ概念がいねんとは凡そ心持の違つた平次です。
上手じようずにやると自分じぶん家屋かおく耐震率たいしんりつともづくべきものゝ概念がいねんられるであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)