-
トップ
>
-
村々
>
-
むら/\
あゝこれが
三留野といふところか、これが
須原といふところか、と
思ひまして、
初めて
見る
村々が
父さんにはめづらしく
思はれました。
何もかも
父さんには
初めてゞした。
遠くアムールの
岸を
噛む
波の
響きは、
興安嶺を
越え、
松花江を
渡り、
哈爾賓の
寺院を
揺すり、
間島の
村々に
伝はり、あまねく
遼寧の
公司を
揺るがし、
日本駐屯軍の
陣営に
迫る
しかし
何は
御不足でも
医学博士、
三角康正さんが、この一
行にお
加はり
下すつて、
篤志とまでも
恩に
着せず、
少い
徳本の
膝栗毛漫遊の
趣で、
村々で
御診察をなすつたのは、
御地に
取つて
ぞ
祝し奉つる別して紀州にては
村々在々まで
殊の外に喜び
祝しけるとぞ。