木枕きまくら)” の例文
ふいに木枕きまくらとばされて、はねおきたのは便乗びんじょうしてきた卜斎ぼくさい呂宋兵衛るそんべえ。フト見ると、どうのグルリに、閃々せんせんと光るものが立ちならんでいる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから、母と自分との蒲団の領分をめようと思って母の木枕きまくらを捜したが見あたらなかった。で、身体を蒲団の片方へよせてまた鉢の湯を一口呑んだ。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
「海賊らしくもないぜ。さっき温泉這入はいりに来る時、のぞいて見たら、二人共木枕きまくらをして、ぐうぐう寝ていたよ」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
くんで持ち出で傳吉の足をあら行燈あんどうさげ先に立ち座敷へ伴ひ木枕きまくらを出しちと寢轉ねころび給へとて娘は勝手へ立ち行き半時ばかり出で來らず傳吉はかしらめぐら家内かないの樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
M子さんの帰って行ったのち、僕はまた木枕きまくらをしながら、「大久保武蔵鐙おおくぼむさしあぶみ」を読みつづけました。が、活字を追うあいだに時々あの毛虫のことを思い出しました。……
手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
では何をするかと言えば、K君やS君に来てもらってトランプや将棊しょうぎひまをつぶしたり、組み立て細工ざいく木枕きまくらをして(これはここの名産です。)昼寝をしたりするだけです。五六日前の午後のことです。
手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)