曾祖父そうそふ)” の例文
新字:曽祖父
手古奈の母方の曾祖父そうそふ物部於由もののべのおゆといふ人は葛飾に名のかむばしき大丈夫にて、一とせ館の騎射に召され、拔群の譽れを立てた、恩賞には
古代之少女 (旧字旧仮名) / 伊藤左千夫(著)
露柴はすい江戸えどだった。曾祖父そうそふ蜀山しょくさん文晁ぶんちょうと交遊の厚かった人である。家も河岸かし丸清まるせいと云えば、あの界隈かいわいでは知らぬものはない。
魚河岸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
簑田は曾祖父そうそふ和泉いずみと申す者相良遠江守さがらとおとうみのかみ殿の家老にて、主とともに陣亡し、祖父若狭わかさ、父牛之助流浪るろうせしに、平七は三斎公に五百石にて召しいだされしものに候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その男の曾祖父そうそふが流罪になったのだそうで、夫婦ともこの村の生れであり、こごさはその一人娘だったのです
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それは僕の曾祖父そうそふに当る人が富本の名人であったが、何か悪い人の為に毒薬を飲まされ、全身がふらふらになり、祖父はそのためにひどい苦しみをしたのである。
美術学校時代 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
「もしもし、ルゲイエさん!」と、そのとき、ヤルマールのている、上のかべにかかっている、古い肖像画しょうぞうがが言いました。「わしはヤルマールの曾祖父そうそふです。 ...
我には子汝には曾祖父そうそふなりき、汝すべからく彼の爲にその長き勞苦をば汝のわざによりて短うすべし 九四—九六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
此の間から休養をとる意味で、曾祖父そうそふの頃からのスティヴンスン家の歴史を書始めた。大変楽しい。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
曾祖父そうそふの代からずっと医学者がつづいており、曾祖父の針目逸斎いっさい、祖父の針目寛斎かんさい、父の針目豹馬ひょうまと、みんな医学者であり、そして邸内に、古めかしい煉瓦建れんがだてではあるが
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
クリストフはこの書物をあまり読んだことがなかった。しかしただいまそれを見出して、なんとも言えないうれしさを感じた。この聖書は祖父のものであり、また曾祖父そうそふのものでもあった。
亮の家の祖先は徳川とくがわ以前に長曾我部ちょうそかべ氏の臣であって、のち山内やまのうち氏に仕えた、いわゆる郷士であった。曾祖父そうそふは剣道の師範のような事をやっていて、そのころはかなり家運が隆盛であったらしい。
亮の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
曾祖父そうそふの宮、祖父の太政大臣、父宮などの遺産の分配されたのが多くて、夫人は、高級の貴女の生活の様式をくずさず愛女をかしずくことができて、奥ゆかしい佳人の存在と人から認められていた。
源氏物語:45 紅梅 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その父親、つまり私の曾祖父そうそふにあたる人は、嘉永にはならぬ位の徳川末期の時分で、丁度その当時流行した富本節が非常に巧く、美声で評判になったものらしい。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)