曲舞くせまい)” の例文
高貴の姫君と申しましても恥ずかしからぬあでやかさ、それに、生花、和歌、茶の湯、曲舞くせまい、小鼓、何んでも出来て、その上才智も人に勝れ
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
瘡家そうけとよばれる田舎医者、あやしげな祈祷師、遊芸人の放下ほうかや、暮露ぼろ(虚無僧)、曲舞くせまい猿楽師さるがくしといったようなものもある。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十八日の三毬杖さぎちょうはやしを唱え、曲舞くせまいを舞ったからとて、それで一年中全部落の者が生きられるはずはない。
俗法師考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
酒盃数献すうこんの後、幸村小鼓を取出し、自らこれを打って、一子大助に曲舞くせまい数番舞わせて興を尽した。
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
太夫聞いてさては我が能まだ上手に達せずと。人々男の小さきは生まれ付きなり、能の上手下手に係らずやと問うと、太夫、善知鳥うとう曲舞くせまいに鹿を追う猟師は山を見ずという古語を引き居る。
また昔からありきたった傀儡子くぐつしが、宮中でもって輪鼓、手鞠等を興行したこともある。曲舞くせまいの児の上手を叡感あらせられて、扇を賜わった時に、実隆が仰せによって古歌を認めて与えたこともある。
千秋万歳せんずまんざいと称して、正月の四日五日に禁廷に罷り出でて色々の曲舞くせまいを奏した者も、亦唱門師であった。
俗法師考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
「そのお方様は黄金こがねの雨も白銀しろがねの雨も降らせませぬ。総じてその方のお話は風雅の道ばかりでございます。例えばこう、和歌の話、糸竹いとたけの道にもお詳しく、曲舞くせまいもお上手でございます」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
信長の幸若舞こうわかまいも有名だったが、あの真面目くさい徳川家康にしても、自然居士こじ曲舞くせまいはおはこの芸であったし、その家臣の酒井忠次といえば、えびすくいの名人として、その珍なる踊りは
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鼓はなけれど、手拍子てびょうしひざ拍子。いつもの曲舞くせまいの一節、共々ともどもうたわれよ
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)