“方(え)” の例文
しかも海路を立ち退くとあれば、行(ゆ)く方(え)をつき止める事も出来ないのに違いない。これは自分一人でも、名乗(なのり)をかけて打たねばならぬ。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
シグナレスはじっとその雲の行(ゆ)く方(え)をながめました。それからやさしい腕木を思い切りそっちの方へ延(の)ばしながら、ほんのかすかに、ひとりごとを言(い)いました。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その後、二人とも行(ゆ)く方(え)が知れなくなり、流すのは惜しいと言うので、僕が妻のためにこれを出してやった。少し派手だが、妻はそれを着て不断の沈みがちが直ったように見えたこともある。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
「あの人のは自棄半分(パル・デピ)じゃありません。いわば重なる不幸のためなんです。兄さんのドミートリが懲役(ちょうえき)になったまま、今では行(ゆ)く方(え)が知れないのですよ。お母さんは悲嘆のあまり亡くなるし。」
そうすると、王女はこっそりどこかへ遁(に)げてしまって、それなり行(ゆ)く方(え)がわからなくなりました。王さまは方々(ほうぼう)へ人を出してさんざんお探しになりましたが、とうとうしまいまで見附(みつか)りませんでした。
黄金鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
岫(しゅう)を出づ雲のゆく方(え)はいずこにや。西に候(そろ)か。東に候か。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左近(さこん)を打たせた三人の侍は、それからかれこれ二年間、敵(かたき)兵衛(ひょうえ)の行(ゆ)く方(え)を探って、五畿内(ごきない)から東海道をほとんど隈(くま)なく遍歴した。が、兵衛の消息は、杳(よう)として再び聞えなかった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)