敢然かんぜん)” の例文
カンニングの連中にいつも脅迫されながら敢然かんぜんとして応じなかったのは光一であった。もっともたくみなのは手塚であった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
私は、兄の叱咤しったの言よりも、そのほうに、そっと耳をすましていた。ふっと一言、聴取出来た。私は、敢然かんぜんと顔を挙げ
一灯 (新字新仮名) / 太宰治(著)
フランス軍の将校のためにピアノの演奏を迫られ、敢然かんぜん峻拒しゅんきょして二百キロを歩んでウィーンに帰ったことなどもあった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
ふいに、捕物学の講義をはじめたり、前には、嘆息に暮れていたと思うと、こんどは、敢然かんぜんと、最後までやるという。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敢然かんぜん立つて常情平述主義を唱へ「ただ言歌ことうた」の旗印を高く掲げた才一方の年上の老友がうらやまれた。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
しかし、強い正しい心を持っている少年少女は、どんな境遇にいても、敢然かんぜんとしてその正しさをげない、ということを、バァネット女史は両面から書いて見せたに過ぎないのです。
己は必ずや、敢然かんぜんとして外界の壓迫に抵抗しつゝ、ぐんぐんと目的地へ猛進して行くだろう。しかるに己の素質は、不幸にして政治家にも、学者にも、実業家にも、宗教家にも不適当なのである。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そのうちに、彼は、ある日、はしなくも、卑劣な一上級生によって、忍びがたい侮辱を加えられ、ついに敢然かんぜんとして立ちあがることになった。この時、彼は、彼の手に小さな兇器きょうきをさえ握っていた。
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
しかし、失敗なんてものは物の数ではないよ。問題は実行すると云うことだ。俺達は敢然かんぜんと実行する資格だけは持ってるんだからな。あらゆる可能性をためしてみる資格だけは持ってるんだからな。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
遂に敵の地底戦車にとりかこまれたのだと悲観しましたのに対し、洪青年は、こんなところに地底戦車隊がいるとは思えないと主張してゆずらず、その揚句あげく、遂に洪青年の意に従って、われわれは敢然かんぜん
と、敢然かんぜんとして立ちむかう人生の闘士の前には、およそその人間を自殺せしめるほどな逆境はこの世にはあり得ない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ドドンと帆村は敢然かんぜん引き金を引いた。今や危急存亡ききゅうそんぼうときだった……
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
敢然かんぜんたる言葉を私は、何も持っていないのだ。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
お仲は敢然かんぜんとして喰つてかゝりました。
いうが早いか、やりを持ちなおして、敢然かんぜん試合場しあいじょうのほうへ帰ってきたが、まだれいもすまないうちに血気けっきばしった祇園藤次ぎおんとうじが、颯然さつぜんとおどりかかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お仲は敢然かんぜんとして喰ってかかりました。
馬筏うまいかだを組んで、敢然かんぜんたる渡河戦の先陣を切った。もとより河中では矢ぶすまを浴び、対岸へ斬りこんでからも、たくさんな犠牲を出したのはいうまでもない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
源吉は敢然かんぜんとしました。
山毛欅ぶな洞穴うつろからびだしたひとりの怪人かいじんが、電火でんかのごときすばやさで、かれの胸板むないた敢然かんぜんとついてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今川家にも織田家にも属せず、この際敢然かんぜん、孤立を表明するか。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長政は、自分へ迫る死へたいして、敢然かんぜん、云い払っていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が龍太郎はもう立ちあがって、敢然かんぜんれいをしながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)