)” の例文
前岸かわむこうの巨木からさがった鉄鎖てつさのような藤葛ふじかずらが流れの上に垂れて、そのはしが水のいきおいで下流になびき、またね返って下流に靡いているのが見えた。
仙術修業 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「僕にも近頃流行はやるまがい物の名前はわからない。贋物にせものには大正とか改良とかいう形容詞をつけて置けばいいんだろう。」と唖々子は常にさかずきなさない。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
懐には合口あいくちをのんで居る位に心掛けて、怪しい者が来ると脊負しょって居る包をねて置いて、懐中の合口を引抜くと云う事で始終山国やまぐにを歩くから油断はしません。よく旅慣れて居るもので御座ります。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
岡本は羽織をぱっと後にねた。放ねると同時に背の方にまわして持っていた日本刀をった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
女はそれと同時に羽二重はぶたえの白い裏の掛蒲団かけぶとんねて外に出ながら、華美はで長襦袢ながじゅばんの前をつくろいつくろい章一の枕頭まくらもとに坐った。章一は女が坐ってしまうとふすまの外へ声をかけた。
一握の髪の毛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
傲慢な親信は仕事にかこつけて見向きもしなかったので、血気の多い親実は怒って矢を飛ばした。矢は親信の笠に音を立ててねかえった。親信はその怨みを何時も持っていた。
八人みさきの話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
双子はねおきて広巳の片頬かたほおへ拳を持って往った。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「どう云うものか、ねかえってきつきません」
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)