よんどころ)” の例文
新字:
左樣の人なるかそれがしも此度よんどころなき事にて九州へ下るなれ共此用向のすみ次第しだいに是非とも關東くわんとうへ下向の心得なれば其節そのせつは立寄申べしと契約けいやくし其場はわかれたりさて寶澤は九州
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
校正でよんどころなく歸りの遲くなつた夜など、電車の送迎に忙しいひけ時から青電車の時刻も迫つて絶間々々にやつて來る電車を、一臺送つては次かと思ひ、又一臺空しく送つては次かと思ひ
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
けれども小児こどもでは無し、ただ嫌だ、一刻も居られぬとばかりでは事が済まぬ、その仔細を云え、情由を話せと厳しく詰問すると、妹は今はよんどころなく、顔色変えて語り出したのが、即ち次の怪談で——。
お住の霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
忠之はよんどころなく利章に出勤を命じた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
かきはなはだこまり入が承まはれば其方に召仕めしつかふ吉之助とやらんは殊の外發明者はつめいものの由なり拙者方せつしやがた召使めしつかひたしとの事なるが何共迷惑めいわくに思ども主人のたのみなればいやとも云れずよんどころなく承知なし早々我家へ歸り女房にようばうにも此事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
權三 まつたくよんどころない用がありまして……。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
ば致さるゝや小石川御館にては閉門の屋敷やしきへ參り居殘致ゐのこりいたす者は一人もなし狼狽うろたへたる申分かな彼是かれこれ申さば切て捨んと大言に叱り付られ番衆もよんどころなく開門して通しける主税之助は首尾能しゆびよく仕課しおほせ急ぎ小石川へ歸り御前ごぜんへ出て右の次第を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)