挿入さしい)” の例文
旧字:插入
と、すぐその榎の根の湧水わきみずに、きように褄を膝に挟んで、うつむけにもならず尋常に二の腕をあらわに挿入さしいれた。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鏡面レンズに照して二三の改むべきを注意せし後、子爵は種板たねいた挿入さしいるれば、唯継は心得てそのちかきを避けたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
牝馬めすうまの腹に獣骨の管を挿入さしいれ、奴隷どれいにこれをかせて乳を垂下したたらせる古来の奇法きほうが伝えられている。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
幸兵衞夫婦は左右から長二の背中をのぞいて、互に顔を見合せると、お柳はたちま真蒼まっさおになって、苦しそうに両手を帯の間へ挿入さしいれ、鳩尾むなさきを強くす様子でありましたが、おさえきれぬか
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
古河黙阿弥ふるかはもくあみの著述に大蘇芳年たいそよしとしの絵を挿入さしいれた「霜夜鐘十時辻占しもよのかねじふじのつじうら」。伊藤橋塘いとうけいたうと云ふ人の書いた「花春時相政はなのはるときにあひまさ」といふ侠客伝けふかくでんもある。「高橋たかはしでん」や「夜嵐よあらしきぬ」のやうな流行の毒婦伝もある。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかし阿五には一片の侠気があって、無論どうあっても世話しないではいられないのだ。だからしばらく押問答の末、遂に許されて、阿五は彼女の乳房と子供の間にひじ挿入さしいれ、子供を抱き取った。
明日 (新字新仮名) / 魯迅(著)
あん、と口をひらいた中へ、紫玉はむ事を得ず、手に持添もちそへつつ、釵のあし挿入さしいれた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)