振乱ふりみだ)” の例文
旧字:振亂
あまつさえ陰々として、もすそは暗く、腰より上の白き婦人が、たけなる髪を振乱ふりみだしてたたずめる、その姿の凄じさに、予は寧ろ幽霊の与易くみしやすさを感じてき。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たちまち人の跫音に心附こころづいたと見えて、灰色のおどろ髪を振乱ふりみだしつつ此方こなたきっみかえった。市郎はつかつかと眼前めさきに現れた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
髪をオドロと振乱ふりみだした半狂乱のていでバタバタと駈けて来て、折から日比谷の原のはずれに客待ちしていたくるまを呼留め、飛乗りざまに幌を深く卸させて神田へと急がし
お葉は初めて手をゆるめた。荒鷲の爪から逃れ出たぬくどりのように、冬子は初めてほッと息をいたが、髪を振乱ふりみだした彼女かれの顔には殆ど血色ちのいろを見なかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ず入口に黒髪を振乱ふりみだしてよこたわっているのはのお葉で、彼女かれは胸や肩やのどヶ所の重傷を負っていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)