ひしゃ)” の例文
ぐしゃりとひしゃげたように仕切にもたれて、乗出して舞台を見い見い、片手を背後うしろへ伸ばして、猪口を引傾ひっかたむけたまま受ける、ぐ、それ、こぼす。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのまま、茄子なすひしゃげたような、せたが、紫色の小さな懐炉かいろを取って、黙ってと技師の胸に差出したのである。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……あの水戸屋の屋根がの、ぐしゃぐしゃと、骨離れの、柱離れでひしゃげての——私らは、この時雨しぐれの松の……
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぼんやりと小さくしゃがんで、ト目に着くと可厭いや臭気においがする、……つち打坐ぶっすわってでもいるかぐらい、ぐしゃぐしゃとひしゃげたように揉潰もみつぶした形で、暗いから判然はっきりせん。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その物干がひしゃげた三徳のごとくになって——あの辺も火ははやかった——燃え上っていたそうである。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と円い腕を、欄干てすりひしゃげそうにのッしといて、魯智深の腹がたぶりと乗出す……
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……ひしゃげたっておしくはないわ、薄黒くなった麦稈帽子むぎわらぼうしを枕にして、黒い洋服でさ。
以前は橋廊下で渡ったらしいが、床板の折れひしゃげたのを継合せに土に敷いてある。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とまた落着いたように、ぐたりと胸を折った、うずくまった形がひしゃげて見えて
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
観世捩かんぜよりひしゃげたていに、元気なく話は戻る……
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
名所の石にひしゃげました。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)