よりどころ)” の例文
旧字:
のち日本国で今はえらいという俗言が一つ出来しゅったいせし由、しかれば古き喩えはいずれも故実のある事、今様の俗言も何なりとよりどころのある事ならん云々
かく著者が樗を「おうち」、臭椿を「くそつばき」とするに至っては仮令たといそこにどんなよりどころがあったとしても、それは杜撰ずさんの甚だしいものである。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
エヽ講談の方の読物は、多く記録、其の古書とう、多少よりどころのあるものでござりますが、浄瑠璃や落語人情噺に至っては、作物さくぶつが多いようでござります。
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
養子霧渓むけいは行状に「安永丁酉冬(中略)年四十」と書した。何のよりどころあつての事か不詳である。安永六年丁酉に錦橋は、享保二十年生として四十三、正説元文元年生として四十二になつてゐた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
この信念と祖先崇拝とに、わが国の道徳のよりどころがあると私は信じています。
渡良瀬川 (新字新仮名) / 大鹿卓(著)
もともとどんなよりどころがあるのであろう。
今も竜王の像に、必ず竜が頭から背中へかじり付いたよう造るは、この本文をよりどころとしたのだろ。
何かよりどころがあって書いたものか。それとも独創の文字か。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
熊楠案ずるに、『和漢三才図会』に家鶏日々一卵ずつ生むをその都度取り去れば幾つともなく生み続けて数定まらず、もし取らずに置けば十二卵を生んでやむとあるによりどころあるごとし。
既に論じたごとく、実際蟒蛇には二足の痕跡を存するから張衡の偽言もよりどころあり。
死んだきたの明細書がなかった由をよりどころとして控訴した。