抜萃ばっすい)” の例文
旧字:拔萃
抜萃ばっすいでなく再話でもないこの全訳『グリム童話集』は、そのまま児童の教育読本ではないかもしれないが、グリム自身の言葉をかりれば
『グリム童話集』序 (新字新仮名) / 金田鬼一(著)
一、古俳書など読むも善し、あるいはこれを写すも善し、あるいは自ら好む所を抜萃ばっすいするも善し、あるいは一の題目の下に類別するも善し。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
御自分で、いろいろの本から抜萃ばっすいされたのを仮綴にして配られなどされましたが、この方も間もなくおやめになりました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
わたくしは保さんの所在ありかを捜すことと、この抜萃ばっすいを作ることとを外崎さんに頼んで置いて、諸陵寮の応接所を出た。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
『朝日新聞』に連載された氏の手記の中から、これに関係した部分を抜萃ばっすいしてみるのも、興味あることであろう。
彼にとってかけがえのないコットン・マザーの著書からいろいろと抜萃ばっすいし、またそれに加えて、生れ故郷のコネティカット州でおこった事件をたくさん話したり
貝原益軒かいばらえきけんがものせる『大和俗訓やまとぞっくん』の中に、忠告に関するまことに穿うがった教訓があるから、左に抜萃ばっすいする。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わが読者のうちにもすでに御承知の方もあらうが、古来の小説随筆類のうちから詐欺的犯罪行為に関する小話しょうわを原文のまゝに抜萃ばっすいしたもので、長短百種の物語を収めてある。
赤膏薬 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
明治十九年以前にできた地理局の小地名調査は、奈良県の分は相応に綿密で、自分もその中から若干の抜萃ばっすいをして持っていたのだが、誰かに貸してあって今は利用し得ない。
和州地名談 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その時の映画の種板はたいてい一枚一枚に長方形の桐製きりせいのわくがついていて、映画の種類は東京名所や日本三景などの彩色写真、それから歴史や物語からの抜萃ばっすいの類であった。
映画時代 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
おそわった。『スケッチ・ブック』なんて言ったって本が無かった。先生は自分で抜萃ばっすいしたのをわざわざ印刷させた。アーヴィングなぞを紹介したのは恐らく浅見先生だろうと思うよ
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
でたらめばかり書いているんじゃないかと思われてもいけないから、吾妻鏡の本文を少し抜萃ばっすいしては作品の要所々々に挿入して置いた。物語は必ずしも吾妻鏡の本文のとおりではない。
鉄面皮 (新字新仮名) / 太宰治(著)
植物の種を植木会社からとりよせるにしても二つ三つカタログを照らし合わせて、抜萃ばっすいをつくって、瑛子に書きつけを示し、これが一番いいから幾ら幾らと二円三円の金でも出して貰う。
海流 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
朝の水浴みずあびをし、それから食事をすませて、あとは故郷の山でつんだ番茶を入れた大きな湯呑ゆのみをそばにおいて、ラジオのニュース放送の抜萃ばっすいを聞き入っているとき、カユミ助手が入って来て
断層顔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
抜萃ばっすいしてある仏教の金言警句集とでもいったような性質の書物である。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
六月二十三日——ロウヤル・アルバアト会館ホウルにロウヤル・コウラル協会の「ヒアワサ」を見る。ロングフェロウの詩をコラリッジ・テイラアが抜萃ばっすい作曲したのを、フェアベイルンが演出しているのだ。
すこし、ここへ抜萃ばっすいしてみよう。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
抜萃ばっすいすることを許し給え。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
抜萃ばっすいすると
空罎 (新字新仮名) / 服部之総(著)
○けふ或る雑誌を見て居たらば、新刊書籍のうちに、鳴雪翁の選評にかかる俳句選といふものの抜萃ばっすいが出て居つた。その中から更に抜萃して見ると
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
授業の内では語学は珍しいのですが、国語漢文などは抜萃ばっすいのものばかりで、張合はりあいのないことでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
その一部を抜萃ばっすいすれば
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
但し俳句に入る人繊巧より佶屈より疎大より滑稽よりおのおの道を選びて進むこと勿論なれども、平易より進む方最も普通にしてしかも正路せいろなりと思ふが故に、ここに平易なる句を抜萃ばっすいせり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)