手掛てがかり)” の例文
「で犯行の手掛てがかりは? 被害者の身許みもとが分らないとすると、せめて、犯人の手口を示す、一寸ちょっとした証拠でも残ってはいなかったかしら」
半年ばかりたつ何者なにものとも知れず、はかあばいて石をぬすさつたものがある。子は手掛てがかりがないのでふことも出來ず其まゝにして二三日たつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
もとよりそれは完成された文章では有り得ないけれども、その草稿を手掛てがかりとして、観念を反復推敲することができ、育て、整理することが出来る。
文字と速力と文学 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
判るかい。つまりこの煎餅と言い、莽草の実と言い、二つながら手掛てがかりとしては非常に特殊な代物である事に注意し給え。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
それなら自力でそれをきわめ得るかと云うと、まあ盲目めくら垣覗かきのぞきといったようなもので、図書館に入って、どこをどううろついても手掛てがかりがないのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もとよりそれは完成された文章では有り得ないけれども、その草稿を手掛てがかりとして、観念を反復推敲すいこうすることができ、育て、整理することが出来る。
文字と速力と文学 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
正岡氏は、かくも矢つぎばやに提出される数々の手掛てがかりに、むし変挺へんてこな驚きを感じないではいられなかった。これがそもそも予告犯人の所謂いわゆる「完全なる犯罪」なんだろうか。
その二人が五日前の晩から行方不明になってしまい、捜査に努力した水陸両警察署も、何等なんら手掛てがかりを得る事も出来ず、事件はそのまま忘れられようとしていた時の事だけに
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
永い間姿を隠していたのは、その間に何か真相をあば手掛てがかりつかんだのか、あるいは証拠がための為めに奔走ほんそうしていたに違いないと思ったので、私は橘の探偵談を聞きくて、話をその方に向けてみたのだ。
火縄銃 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)