扈従こしょう)” の例文
旧字:扈從
また、修法のから、脇廊下わきろうか此方こなたへ参らるゝ資治卿の方は、佩刀はかせを持つ扈従こしょうもなしに、ただ一人なのである。御家風ごかふうか質素か知らない。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いつも時平の腰巾着こしぎんちゃくを勤める末社まっしゃどもの顔ぶれを始め、殿上人てんじょうびと上達部かんだちめなお相当に扈従こしょうしていて、平中もまたその中に加わっていた。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
王之臣おうししん補鍋ほかもって生計を為さんとして老補鍋ろうほかと称し、牛景先ぎゅうけいせん東湖樵夫とうこしょうふと称し、各々おのおの姓をうずめ名を変じて陰陽いんよう扈従こしょうせんとす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
残る三人は五十塚いそづか紋太夫、額田采女ぬかだうねめ、原野九郎兵衛という、いずれも森家江戸邸の物頭ものがしら格以上で、五十塚は七百石の扈従こしょう組支配を勤めている。
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
せき夫人繁子しげこを書斎に呼びて懇々浪子の事を託したる後、同十三日大纛だいとう扈従こしょうして広島大本営におもむき、翌月さらに大山大将おおやまたいしょう山路やまじ中将と前後して遼東りょうとうに向かいぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
鷲津毅堂は藩主慶勝に扈従こしょうしその重臣田宮篤輝、丹羽淳太郎、田中国之輔くにのすけらと同じく京師に赴いた。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
六カ月も、七カ月も、一元の給料さえ、兵卒に支払わない、その督弁トバンの張宗昌は、城門附近で、自動車から、あわれげな乞食の親子を見て、扈従こしょうに、三百元を放ってやらした。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
政府のいうことなんか信用できないと云いながら、その政府に扈従こしょうする言論や出版をそのまま権威とする素朴さがある。あの世論調査を心ある外国人が見たら、何と感じるだろう。
やはりあの矢だ。家綱いえつなはそううなずきながら、的につき立った矢をしばらく見まもっていたが、やがて脇につくばっている扈従こしょうにふりかえって
日本婦道記:箭竹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それを見ると生前検校がまめまめしく師につかえてかげの形にうように扈従こしょうしていた有様がしのばれあたかも石にれいがあって今日もなおその幸福を楽しんでいるようである。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
毅堂はこれより先藩命を帯びて京師に赴いたが即日召還せられ藩主に扈従こしょうして信州に出陣した。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さらに扈従こしょうの者をもさがらせ、源七郎とふたりだけになった直政は、「ゆるす、近うまいれ」と自分もひざをすすめた
青竹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
これは百樹の媒酌で、相手は秋沢継之助つぐのすけといい、扈従こしょう組の上席で三百石のいえがらだった。
日本婦道記:風鈴 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)