)” の例文
「お前の大変にはりしているよ、そのたびごとに泥足で飛上がったり、煙草盆を蹴飛ばしたりするんだから——」
もうりだ。何が釣れたって魚はにぎりたくない。魚も握られたくなかろう。そうそう糸を捲いてしまった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
また軽井沢で、自然の力と境遇の偶然性に駆られて、ちょっと唇を触れただけでも、その怖しい報いが、きびすを接してやって来た。だから、りしている。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「ええ、もうりしましたわ。それよりか人様のおうちに働いている方が気楽でう御在ます。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そして明日の午前中に道玄坂をい、午後に土産物などを買って夜行で立とうと云うつもりであったが、夜汽車は来る時にりした、睡眠不足がたまっているから
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
其日庵の紹介にはりだという話です。お蔭で会社が潰れて二百名の職工が路頭に迷いますというのや、貴方の乾分の弁護士の御蔭で三年の懲役が五年になりました。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
が、勿論実生活の上では安全地帯の外に出ることはたった一度だけでりしてしまった。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかしだんだん気候が寒くなって後にくうと、すぐに腹をいためるので、前年も胃痙いけいをやってりした事がある。梨も同し事で冬の梨は旨いけれど、ひやりと腹にみ込むのがいやだ。
くだもの (新字新仮名) / 正岡子規(著)
自分も実は大の聴聞脅迫党で、今まで随分謡曲嫌いを製造した覚えがあるが、ここに只一つ無類飛び切りの謡曲好きに出会でくわして、かえってヘトヘトに悩まされてりした珍談がある。
謡曲黒白談 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
折角御嬢さんのりかをつきとめながら、とり戻すことが出来ないのは残念だな。一そ警察へ訴へようか? いや、いや、支那の警察が手ぬるいことは、香港ホンコンでもうりしてゐる。
アグニの神 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それから此方こっち、義兄は雪子の縁談にはりした形で、他人が持って来てくれる話には喜んで耳を傾けるけれども、自分が積極的に取り持つことや、先に立って良い悪いの意見を述べることは
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
わっしゃもう少しで病気になるところだったんで……もうりしました。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)