トップ
>
恟
>
すく
ふりがな文庫
“
恟
(
すく
)” の例文
良人には、出て行くと云って、踏み出した
閾
(
しきい
)
だし、門の外には、その不気味なものが仆れているので、お市は、そこに立ち
恟
(
すく
)
んでいた。
夕顔の門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
楠平は、手燭を
灯
(
つ
)
けた。そして揺れる灯を
庇
(
かば
)
いながら、庭へ出て行ったが、主人たちの住む南側の母屋を見て、眼を
恟
(
すく
)
めた。
夕顔の門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
木蔭の男は、
恟
(
すく
)
みを禁じえなかったらしく、へたっと地上にかがまったばかりでなく、帝の眼光にもひしがれて、おもわず平伏してしまった。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だが、それに輪をかけたお変りように、
宰相
(
さいしょう
)
ノ清忠は、きもを
恟
(
すく
)
めた。——が、勅のお使いである。あくまでつつしんで。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
地を揺り上げられた心地で、はッと
恟
(
すく
)
んだ途端に、小石交じりの土が、
焔硝
(
えんしょう
)
のけむりと一緒に、びしゃッと、飛んで来た。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
老僧は、まだ何か、いいつづけていたが、馬の大声に
恟
(
すく
)
んで、急に口をつぐんだ。劉備はその
機
(
しお
)
に、堂の外へ出てきた。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
白匁に
恟
(
すく
)
んでしまつてもいけないのだ。妙に構へてゐてもいけないのだ。春風と柳の葉の樣に睦じくなければ酒をのむかひもない。大勢で飮む樂しみはない。
折々の記
(旧字旧仮名)
/
吉川英治
(著)
それをもって、わしの寝首を
掻
(
か
)
こうと神かけていたものだろう。
可恐
(
こわ
)
いな。尊氏、大軍は何の怖れともせぬが、こういう目に見えぬところの刃には心も
恟
(
すく
)
む。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恟
(
すく
)
み
足
(
あし
)
の田楽役者たちも、ぜひなく、高時の影を
繞
(
めぐ
)
り、また、ツレ舞しては、再び踊った、踊り狂った。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こういう
寡兵
(
かへい
)
で立ち向ったとき、相手の兵数に呑まれて、身を
恟
(
すく
)
め、狭地を守り、防ぐばかりを能としていたら、その孤立は完全に、敵の
捕捉
(
ほそく
)
にまかすしかない。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
逃げもせずただ
交
(
か
)
わそうとのみして
恟
(
すく
)
めた肩を、高氏の酔いの手がもうワシづかみにつかまえていた。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
公卿はみな、青白く黙り沈んでいるのみだし、後醍醐もまた、きざはしの半ばに釘ヅケにされた
態
(
てい
)
で、この一個の荒武者を、どうするすべもなくお立ち
恟
(
すく
)
みのままだった。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、言い払い、ホホとその白い
花顔
(
かんばせ
)
が闇を占めて笑っているかのよう。……宋江以下、
修羅
(
しゅら
)
という修羅の場かずをふんできた梁山泊の男どもも、思わず馬列を
恟
(
すく
)
み立てて
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
男は、それに、
恟
(
すく
)
みを覚えた。拒否の心理は、意気地なく、男の心の内がわに
閉塞
(
へいそく
)
される。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれど、立ち
阻
(
はば
)
んだ
廉子
(
やすこ
)
の眼に射られて、ついその場に
恟
(
すく
)
んでしまったのである。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
若い男女は、
恟
(
すく
)
んだまま、楠平の
甲
(
かん
)
だかい声に、顔いろを
顫
(
おのの
)
かせていた。
夕顔の門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真っ蒼になって——しかし人前を
憚
(
はばか
)
るように、棒立ちに
恟
(
すく
)
んでしまった。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
よろよろと、立つと、彼方の闇に、凍ったように
恟
(
すく
)
んでいたお次は
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恐ろしい父の声に、亀一は気の弱い
眸
(
ひとみ
)
を
恟
(
すく
)
めて、後へ
退
(
さが
)
りかけた。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
道誉は大ゲサな
恟
(
すく
)
みをみせて、はッと振り向いたが
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼はギクと足を立ち
恟
(
すく
)
めた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
新田勢は立ち
恟
(
すく
)
み
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恟
漢検1級
部首:⼼
9画
“恟”を含む語句
恟々
恟然
戦々恟々
人心恟々
恟々然
物恟