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恟
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ぎょ
ふりがな文庫
“
恟
(
ぎょ
)” の例文
「——な、なんでえ、てめえはさッき坂本で休んでいた
旅商人
(
たびあきんど
)
じゃねえか。侍みてえな声を出しゃあがって、
恟
(
ぎょ
)
ッとするじゃねえか」
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恟
(
ぎょ
)
っとして一歩退き、
燐寸
(
マッチ
)
を取出してすった。ぱっと光が洞穴の四壁を照した、見ると、……奥の方に誰か倒れている者がある
殺生谷の鬼火
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
元より房枝などと云う平凡な名前は東京中にても何百となく在りましょう。
乍然
(
しかしながら
)
、私があの場合
恟
(
ぎょ
)
ッと衝動を受けたのは理屈ではありません。虫ノ知ラセと云うのは斯う云うのでありましょうか。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
もう
宵闇
(
よいやみ
)
の空に白い星のまたたいている頃だし、そう
参詣人
(
さんけいにん
)
もない境内なので、気をゆるしていたので、彼はよけいに
恟
(
ぎょ
)
ッとした。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かれらを追いぬいて馬を停め、とび下りて振返るのを見ると、折江と松乃とがまず声をあげ、平之助は明らかに
恟
(
ぎょ
)
っとした。
主計は忙しい
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
恟
(
ぎょ
)
っとして、新七はその人影を、星明りにすかして見た。具足に身をかため、槍をたずさえている。どこか見覚えのあるような気もした。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「……」相手は
恟
(
ぎょ
)
っとした、まるで殴られでもしたような感じで、首だけ後ろへついと反らせた、「……ああ、太橋か……」
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
左は谷、右は絶壁の下り道を、お延は新九郎の手を寸時も離さなかったが、とある曲り角へ来た時、彼は
恟
(
ぎょ
)
ッと
立
(
た
)
ち
竦
(
すく
)
んで
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
捕
(
つかま
)
った相手は、
呼吸
(
いき
)
をしのんで、わざと体を撫でさせているのだったが、内蔵助の手が何ものかを感じて、
恟
(
ぎょ
)
っと引くと
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だが、すっぺりと剃り上がった顔を撫でて立ったとたんに、治郎吉のするどい感覚が、
恟
(
ぎょ
)
ッとして、うしろへ走った。
治郎吉格子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『あの金は、
僅
(
わずか
)
の物に相違あるめえが、僅の物を返せというのに、何を
恟
(
ぎょ
)
ッとしているのだ。よこせ、此っ
方
(
ち
)
へ!』
死んだ千鳥
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
優しげに女を装っているかと思うと、出しぬけに、大人も及ばぬ
叱咤
(
しった
)
を発しるので、そのたびに
恟
(
ぎょ
)
っとさせられた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恟
(
ぎょ
)
っとして丈八は立ち
竦
(
すく
)
んだ。一学は窓へ顔を寄せて、
凝
(
じっ
)
と耳を澄まし切っている。
爛々
(
らんらん
)
と白い眼がそこに光る。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
常磐のふところに抱かれている
嬰児
(
あかご
)
が、ふとまた、むずかり気味に乳をさぐりかけたので、光厳は、自分の声に
恟
(
ぎょ
)
っとしたように、口をつぐんでしまった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、口々に喚いて、門の前に立ち塞がった侍たちの
白刃
(
しらは
)
を見て、今度は、より以上、
恟
(
ぎょ
)
ッと
竦
(
すく
)
んでしまった。
夕顔の門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
主
(
あるじ
)
は
恟
(
ぎょ
)
っと思い当った顔をした。黙ってうなずくと、足のつま先で歩むように、そこを離れて、妻に計った。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「えっ。お稲が——」というと、彼はうろたえた無自覚な足を三五兵衛の寝ていた室へおどり入れようとしたが、釘を踏んだように、自分の盲目に
恟
(
ぎょ
)
ッと
竦
(
すく
)
んだ。
八寒道中
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
耳を澄ましていたが、やがて
恟
(
ぎょ
)
っとしたように、どこかしら痛むらしい体を無理に寝床の上に起して
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、三人とも
恟
(
ぎょ
)
ッとしたように浮腰を立てかけると、そこの
幌
(
ほろ
)
を、海軍
洋刀
(
メス
)
で十文字に切り破って、メリケン刈の頭を突き出した少年マドロスが、にっこと笑って
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
うッかりしていた右腕を不意に掴み取られた玄蕃は、思わず
恟
(
ぎょ
)
ッとして間近にその人を見れば、南無三、編笠の内からゆったり垂れた、脅威の長髯は一目で知れる鐘巻自斎。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恟
(
ぎょ
)
ッとして振り顧ったが、蚊帳の中の侍は依然たる様子。だのに、引いても、もがいても、
裳
(
すそ
)
は何物かに食い止められて、お延の体は、それより一寸も
退
(
の
)
ッ
引
(
ぴ
)
き出来なかった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
又四郎は、棒を投げ捨て——
恟
(
ぎょ
)
っとわが耳を疑って
立
(
た
)
ち
竦
(
すく
)
んでいた。——するとまた
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恟
(
ぎょ
)
ッとして立ちどまると、勘太は背なかの
刀傷
(
かたなきず
)
に、冬の痛みを急に思い出した。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、一度は
恟
(
ぎょ
)
ッとして、狼狽したが、彼の癖として、すぐに虚勢を張った。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、何かに、
恟
(
ぎょ
)
っとしたように、女を見た。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
山岡屋は、
恟
(
ぎょ
)
っとして、足を
竦
(
すく
)
めた。
魚紋
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
仁吉は、
恟
(
ぎょ
)
っとしながら飛び
退
(
の
)
いて
治郎吉格子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恟
漢検1級
部首:⼼
9画
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恟々
恟然
戦々恟々
人心恟々
恟々然
物恟