恐怖こわ)” の例文
廊下人無き処にて秀は読過一遍、「ああ、そうだ。おお、恐怖こわいことね。早速お暇を頂こう。ちょうど可い久濶ひさしぶり祖母様おばあさんの顔も見られる。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一個ひとつから二個ふたつ、三個という順序に、矢つぎ早に打つのが得意でそれが敵をして一番恐怖こわがらせるのであった。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
お前方は月並月並というて大変恐怖こわがって居るがれなどは月並からやって来たのだから、もう月並になろうとしてもなれんので恐怖くも何んともない、月並を
子規と和歌 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
住職の老人には私は平時いつ顔馴染かおなじみなので、この時談はなしついでに、先夜見たはなしをすると、老僧は莞爾にっこり笑いながら、恐怖こわかったろうと、いうから、私は別にそんな感もおこらなかったと答えると
子供の霊 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
そんなにおびえる位なら、そんな恐怖こわい家の近くへ来なけあいいにと思った。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
貴方がちゃんと始末をつけておいて下すったら、私だって、あんなところで醜体を演じなくっても済んだんですわ。無気味な、汚ない、ああ思ってもぞっとする。何という恐怖こわい事だったでしょう。
耳香水 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
美人は鉄をいたわりて、「お前、何悪いことをしやったえ。お丹はあの通り気短きみじかだから恐怖こわいよ。私がわびをしてあげる。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こんの兄哥あにきもそういうし、乗組んだ理右衛門でええも、姉さんには内証にしておけ、話すと恐怖こわがるッていうからよ。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「……まあ、いやじゃないかね、それでベソを掻いたんだね、無理はないよ、恐怖こわいわねえ。」
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
推量して下さいまし、愛想尽あいそづかしと思うがままよ、鬼だかじゃだか知らない男と一つ処……せめて、神仏かみほとけの前で輝いた、あの、光一ツやみに無うては恐怖こわくて死んでしまうのですもの。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おらたまんなくなって、ベソを掻き掻き、おいおい恐怖こわくって泣き出したあだよ。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今でも廊下へ幽霊が出ると謂って、婦人方を恐怖こわがらせた奴よ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いやもう生得しょうとく大嫌だいきらいきらいというより恐怖こわいのでな。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いやもう生得しやうとく大嫌だいきらひきらひといふより恐怖こわいのでな。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
恐怖こわいよう。」
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)