した)” の例文
旧字:
私は砂漠旅行者がオアシスをしたふに似た喉の乾きを覚へ(それは、叙情感、感傷、涙を希ふと云ひ代へても差支へない)
都内に移し撃たしむるに声出ず、本寺に帰せば声もとのごとし、士人磬神聖にして、光政寺をしたうとうわさしたとある。
いぬしたい、人は色にはしる。狗と人とはこの点においてもっとも鋭敏な動物である。紫衣しいと云い、黄袍こうほうと云い、青衿せいきんと云う。皆人を呼び寄せるの道具に過ぎぬ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
封じ目ときて取出とりいだせば一尋ひとひろあまりに筆のあやもなく、有難き事の数々、かたじけなき事の山々、思ふ、したふ、忘れがたし、血の涙、胸の炎、これ等の文字もんじ縦横じうわうに散らして
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いつしたうべき無し、人の師たるものは貴を先にし富を先にして、文を以てせず、師無きにかず、人の友たる者は勢を以てし利を以てし、淡を以て交らず、友無きに如かず、予門をふさぎ戸を閉じ
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
自分は時々こう考えて、早くうちを出てしまおうと決心した事もあった。あまり食卓の空気が冷やかな折は、お重が自分の後をしたって、追いかけるように、自分の室へ這入はいって来た。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)