御腹おなか)” の例文
「少し立っていると御腹おなかの具合が変になって来て仕方がないんです。手なんぞ延ばして棚に載っているものなんかとても取れやしません」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『ほゝゝゝゝ。それはさうと、御腹おなかが空きやしたらう。何か食べて行きなすつたら——まあ、貴方あんたは今朝からなんにも食べなさらないぢやごはせんか。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「ああ今日程忙しい事はなかった。すっかり疲れて御腹おなかも減ってしまった。初茸御飯が待遠しいな。」
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
御腹おなかには大事の/\我子わがこではない顔見ぬ先からいとしゅうてならぬ方様かたさま紀念かたみ唐土もろこしには胎教という事さえありてゆるがせならぬ者と或夜あるよの物語りに聞しに此ありさまの口惜くちおしはらわたを断つ苦しさ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ほんとうにわたしためになりましたわ。辰子さんもいらっしゃればいのに。そりゃ可哀そうな人がいてよ。いつでも、御腹おなかに子供がいると思っているんですって。たった一人、隅の方へ坐って、子守唄こもりうたばかり歌っているの。」
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その内細君の御腹おなかが段々大きくなって来た。起居たちいに重苦しそうな呼息いきをし始めた。気分もく変化した。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あてにはどうしても三田さんの御腹おなかの中がようわからん。矢張惚れてゐやはるのんやろか。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
「雪江さん、地蔵様は御腹おなからないの」ととん子がきくと「牡丹餅が食べたいな」とすん子が云った。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おまささんが御腹おなかが痛いって、だいぶ苦しそうですから、林さんでも頼んで見て貰いましょうか」
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さぞ御腹おなか御減おへりでしょうと云いますから、何でも善いから早く食わせ給えと請求したんです。すると爺さんがせっかくの御客さまだから蛇飯へびめしでもいて上げようと云うんです。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
要するに御腹おなかが減って飯が食いたくなって、御腹が張ると眠くなって、きゅうしてらんして、達して道をおこなって、れていっしょになって、愛想あいそが尽きて夫婦別れをするまでの事だから
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そうして御腹おなか消化こなすために、わざわざここまで歩るいていらしったの」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「さうして御腹おなか消化こなために、わざ/\此所こゝまでるいてらしつたの」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
先刻さっきから急に御腹おなかが痛み出して……」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)