後腹あとばら)” の例文
親の敵として自分を狙う、恐ろしい女であるがゆえに、いっそ後腹あとばら病めぬよう、討って取るのが至当だのに討ち取ろうともしなかった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
善昌の申し立てによると、自分は殺すほどの気はなかったが、お国がいっそ後腹あとばらの病めないように殺してしまえと勧めたのだということです。
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おいらを、この弥太一を生かしておきゃ後腹あとばらが病めるからと、バッサリやりやがったんです。斬ったが何よりの証拠なんだ。
こう、後腹あとばらを痛めるほど、値うちのあるきりょうとは、惚れられている彼の眼にも踏めていなかった。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さらしにかけたのは、こいつならば、よし冤罪えんざいに殺しても、後腹あとばらの病まない無籍者だから、時にとっての人柱もやむを得ないと、当人ではない、役人たちが観念して
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しまいがたばつた/\と何にもかもゆふべの夢の過たる惡事先第一は現在げんざいの弟を殺して此所こゝに居るめひのお文の身の代金しろきんうばひ取たる後腹あとばらは道十郎のからかさひろがる惡事をほねさへ折ず中山殿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なんでも後腹あとばらめないはういやうだがどうだね
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
本来なれば何も彼もすてて、茅野雄の後を尾行て行くか、でなかったら後腹あとばらめぬように——競争相手を滅ぼす意味で——討って取るのが本当であった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
(それではむしろ消極的だ。……いっそ後腹あとばら痛めぬよう、民弥めを討って取ってやろう!)
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ぶった切って水葬礼、一切後腹あとばらやめぬよう、うみへ沈めてしまいましょう。……櫛木氏」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ああこの執念、醒める期はあるまい。いっそ後腹あとばらめぬよう」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)