後人こうじん)” の例文
人世尤も憐むべきは、生前天の声を聞かずして死に入るものと為す。後人こうじんは彼が為めに、天に代り死後の知己たらざるべからず
大久保湖州 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
天下の豪傑、頭山満が来たというので、才物の菊地市長尊大ぶって、羽根づくろいをするために待たせたものらしいという後人こうじんの下馬評である。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
芭蕉は自ら、古池以後いづれの句も皆我句として人に伝ふべしとさへ誇れるに、後人こうじんが特に古池の一句をぐるを聞かば、芭蕉は必ず不満なるべし。
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
鶉衣うずらごろも』に収拾せられた也有の文は既に蜀山人しょくさんじんの嘆賞かざりし処今更後人こうじんの推賞をつに及ばぬものであるが
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
今人こんじんは今人のみ、古人ののりに従ふを要せずと。もつともの事なり。後人こうじんまたく言はんか、それも尤もの事なり。
青眼白頭 (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
ここにおいて鯖江侯要撃ようげきの事も要諫ようかんとはいい替えたり。また京師往来諸友の姓名、連判諸氏の姓名等、成るべくだけは隠して具白せず。これ吾後人こうじんのためにする区々の婆心なり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
もっともこれらの諸本には後人こうじんの異本校合による修正や私意による増補などがあるであろう。従って『枕草紙』の現存諸本はいずれも後人の改修本であって、一として原形を示すものはない。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
しかしこれはたまたまその石碑が建っているがために、ことさらに深く後人こうじんを感ぜしめるのでありまして、その碑のない地方においても、それと似た事実は、実際上たびたびあったのであります。
しかし若し出来るとすれば、彼等の為は暫く問はず、後人こうじんの為にも役立つことであらう。
芭蕉自らこの句を以て自家の新調に属する劈頭へきとう第一の作となし、従ふてこの句を以て俳句変遷の第一期をかくする境界線となしたるがために、後人こうじん相和してまたこれを口にしたりと見ゆ。
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そもそも一技芸の起らんとするや、そが創始時代の制作には必ず原始的なる粗野の精力とこれを発表する簡朴かんぼくなる様式とのあいだ後人こうじんの見て以て窺知うかがいしるべからざる秘訣ひけつを蔵するものあり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)