のべ)” の例文
暗くされし無念に父の武左衞門心濟ねば鬱々うつ/\と今日も消光くらしてお光に向ひ面白からぬ事のみにて身體からだも惡く覺ゆるに床をばのべて少のあひだ足を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
岩崎山、大上山、賤ヶ嶽、田上山、木之本などの第二陣地区にわたる広範囲なもので、当然、のべ何十万人もの労員を要する。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何度も入って来るから、のべ時間にすればこちらの方が古顔ともいえる。もう一人は若い男。テンプラ屋の次男で、病名はアルコール中毒。皆おとなしい。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
「何んだ懷中煙草入ぢやないか——金唐革きんからかはの贅澤なものだな。煙管は銀ののべか、おや/\滅茶滅茶につぶされてゐる、これぢや煙も通るまいよ。——誰のだい、こいつは?」
海上はしきりと登楼いたし、花里にはのべたらに昼夜の揚代ぎょくがついておりますから、座敷へ入れないことは出来ぬ、まるでわが部屋は貸し切りにしたような始末で、まことに都合がわるい。
今かく中古ちゅうぶる草臥くたびれても同一おなじにおいの香水で、おっかけ追かけにおわせてある持物を取出して、気になるほど爪の伸びた、湯がきらいらしい手に短いのべの銀煙管ぎせる、何か目出度い薄っぺらなほりのあるのを控えながら
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「なんだ懐中煙草入じゃないか。——金唐革きんからかわ贅沢ぜいたくなものだな。煙管きせるは銀ののべか、おやおや滅茶滅茶につぶされている。これじゃ煙も通るまいよ。——誰のだい、こいつは?」
かたわらにござりましたのべの長煙管を取るも遅しと、花里を丁々と折檻せっかんいたします。