年紀としごろ)” の例文
「さやうでございますよ、年紀としごろ四十ばかりの蒙茸むしやくしや髭髯ひげえた、身材せいの高い、こはい顔の、まるで壮士みたやうな風体ふうていをしておいででした」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
女主人はわが何の爲めに問ひしかを疑ふものゝ如く、我面を暫し守りて二十八歳と答へつ。ジエンナロ。そはまことに好き年紀としごろにて、殊におん身には似あひたり。
一小間ひとこま硝子がらすを張って、小形の仏龕ぶつがん、塔のうつし、その祖師のかたちなどを並べた下に、年紀としごろはまだ若そうだが、額のぬけ上った、そして円顔で、眉の濃い、目の柔和な男が
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
スーッと立った男はひげの生えて居る、眼のギョロリとした、鼻の高い、年紀としごろ三十四五にも成りましょうか、旅行たび洋服で、一方の手には蝙蝠傘とステッキとを一緒に持ち
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ふさげない事になつてにもにもまぬかれぬ弊風へいふうといふのが時世ときよなりけりで今では極点きよくてんたつしたのだかみだけはいはつて奇麗きれいにする年紀としごろの娘がせつせと内職ないしよくの目も合はさぬ時は算筆さんぴつなり裁縫さいほうなり第一は起居たちゐなりに習熟しうじよくすべき時は五十仕上しあげた
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
その年紀としごろは二十三、四、姿はしいて満開の花の色を洗いて、清楚せいそたる葉桜の緑浅し。色白く、鼻筋通り、まゆに力みありて、眼色めざしにいくぶんのすごみを帯び、見るだに涼しき美人なり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)