帆布はんぷ)” の例文
尾の道の町はずれに吉和よしわと云う村があった。帆布はんぷ工場もあって、女工や、漁師の女達がたくさんいた。父はよくそこへ出掛けて行った。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
大小の帆布はんぷ縄類なわるい、鉄くさり、いかり一式、投網とあみ、つり糸、漁具りょうぐ一式、スナイドル銃八ちょう、ピストル一ダース、火薬二はこ、鉛類えんるい若干じゃっかん
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
帆布はんぷがまるめておいてありましたが、その中から、とつぜん、なつかしい妹ミドリのこえがしたものですから、高一は
電気鳩 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その式場をおおう灰色の帆布はんぷは、黒いもみえだで縦横に区切られ、所々には黄やだいだい石楠花しゃくなげの花をはさんでありました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
馬匹数十頭、兵舟百余艘、弩弓どきゅう、よろいかぶと石火矢砲いしびやほう帆布はんぷ、糧食など、すべて梁庫りょうこに入れられた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
欄干らんかんの外部に釘の出ている個所を見つけると、その釘へ、さいぜんの絣の切れを、風で飛ばぬ様にしっかりと引懸ひきかけて置いて、それから、帆布はんぷの影に隠れ、素肌にただ一枚着けていた
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼は幽霊船中にある帆布はんぷや、麻布を、僕等に集めさした。それを縫合ぬいあわすのは、生理学者の怪老人の仕事だった。そのままに、僕等は、船内をくまなく探し廻って、ろうや、ゴム類をおびただしく集めて来た。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
向ふのすみには痩た赤ひげの人が北極狐ほくきよくぎつねのやうにきよとんとすまして腰を掛けこちらのはすかひの窓のそばにはかたい帆布はんぷの上着を着て愉快さうに自分にだけ聞えるやうなかすかな口笛を
氷河鼠の毛皮 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)