左様そん)” の例文
旧字:左樣
「へえ、左様そんなもんですかな」と門野かどのは稍真面目まじめな顔をした。代助はそれぎりだまつて仕舞つた。門野かどのは是より以上通じない男である。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此方こちら左様そんな事は知りませんから、明日あしたは来るに違いないとまちに待って居りました、橋本幸三郎、岡村由兵衞の二人は
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
決して左様そんな軽薄な事は思わなかったが、私の行為をあとから見ると、詰り然う思ったと同然になっている。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
口だけは怖ろしく達者だが稍低脳であるらしい高慢鼻の二十歳の妹に恋してゐるといふギタアを携へて来た憂鬱気な洋画青年……次々に左様そんな人達が、滞在したが
円卓子での話 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
そんな事なら私は今日ただ今から一切いっさいの周旋をめるがドウだと妻に語れば、妻も私と同説で、左様そんな浅ましい卑しい了簡は決してないと申して、夫妻固く約束したことがあるが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼程あれほど淡泊さつぱりとして、快濶さばけた気象の細君で有ながら、左様そんなことを気にるとは。まあ、あの夢といふ奴は児童こどもの世界のやうなもので、時と場所の差別も無く、実に途方も無いことを眼前めのまへに浮べて見せる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「なにうちにゐる書生ですがね。ひとに何か云はれると、屹度左様そんなもんでせうか、とか、左様さうでせうか、とか答へるんです」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
左様そんな事と存じませんのは、親に似ません娘のおいさで、十二歳の時に清水助右衞門が三千円持って来た時、親父おやじが助右衞門を殺して其の金を奪取うばいと
是より以上は、いくら行つても、へえ左様そんなもんですかなで押し通してましてゐる。此方こちらの云ふことがこたへるのだか、応へないのだか丸で要領を得ない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
孝「貴方様あなたさま左様そんな御無理な事をして、わたくしのような虚弱ひよわい身体にきずでも出来ましては御奉公が勤まりません」
品のい愛敬のあります、何うして此様こんな山の中に斯ういう美人がすまうかと思うくらいで、左様そんな処へ参ると又尚更目に付きますから二人とも見惚みとれて居ります。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
○「なに、お前さんは左様そんなでもねえけれども、ちっと似てえるという話だ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
幸「左様そんなに這入るから悪いや……お平椀ひらに奇妙な物が這入ってるぜ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)