崖道がけみち)” の例文
与八は、こんなことを考えながら、高い石段を下って街道筋へ出で、崖道がけみちを下って、多摩川の岸の水車小屋まで着いてしまいました。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
御用林を見廻りに出た途中、雪解の崖道がけみちから落ちて即死した。死躰は山で荼毘だびにしておろすから、遺族を山へ同行したい、ということであった。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「察するに、先頃の長雨で、山々のかけはしも損じ、崖道がけみち雪崩なだれのため蜀兵もうごくことならず、遂に、われわれの退軍したのもまだ知らずにおるのではあるまいか」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しきりに波立つ胸の不平を葉巻のけぶりに吐きもて、武男は崖道がけみちを上り、明竹みんちく小藪こやぶを回り、常春藤ふゆつたの陰に立つ四阿あずまやを見て、しばし腰をおろせる時、横手のわき道に駒下駄こまげたの音して
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
鳥右ヱ門について歩いてゐたしもべは、かたはらの小山の頂ちかい崖道がけみちを、一匹の鹿がのぼつていくのを見つけました。里に餌をあさりに来た鹿が、奥山へかへつていくところらしいのです。
鳥右ヱ門諸国をめぐる (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
さかさまに落すが如し衣袂いべい皆なうるほひてそゞろさぶきを覺ゆれば見分けんぶん確かに相濟んだと車夫の手を拂ひて車に乘ればまたガタ/\とすさまじき崖道がけみちを押し上り押しくだし夜の十時過ぎ須原すはら宿やどりへ着き車夫を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
馬鹿にするか。……これは俺がこしらえた道だ。おおかた半年もかかったろう。天狗の宮の真後まうしろまでこの崖道がけみちは続いている。いや随分苦労したよ。もうここまでやりとげれば後は的物てきものを盗むだけだ
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
先へ崖道がけみちを降りながら、秀吉はあとを振り仰いだ。二度とこの山へ還らない彼かもしれない。そんな気もちが真剣にしたので、遺言を聞いておこうと思ったのである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬子はお松の先に立って、崖道がけみちを桂川の岸へと下りて行きます。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ぎょッとして上を仰ぐと、上の崖道がけみちを、六、七人の人影と松明たいまつが通りかけていた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
笑いながら、崖道がけみち灌木かんぼくの中へ、沈んで行った。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
崖道がけみちでこんな声もする。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)