山牛蒡やまごぼう)” の例文
山牛蒡やまごぼうの葉と茎とその実との霜に染められた臙脂えんじの色のうつくしさは、去年の秋わたくしの初めて見たものであった。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
台所の流しの下には、根笹ねざさや、山牛蒡やまごぼうのような蔓草つるくさがはびこっていて、敷居しきいの根元はありでぼろぼろにちていた。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
水沢瀉みずおもだか、えご、夜這蔓よばいづる山牛蒡やまごぼう、つる草、よもぎ蛇苺へびいちご、あけびの蔓、がくもんじ(天王草)その他田の草取る時の邪魔ものは、私なぞの記憶しきれないほど有る。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
挽いて粉にしておいて糯・粟などを加えたくさんのよもぎ山牛蒡やまごぼうの葉を搗き込んで草餅として、米マタジすなわち補食用に供するか(ひだびと四巻五号・六巻二号)
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
さてこの一行が、籬の蕁麻いらくさ山牛蒡やまごぼうの中に眠っているリザヴェータの姿を見つけたというわけである。
味噌をブチ込んで「おじや」をこしらえてすする、昼飯の結飯むすびは、焚火にあてて山牛蒡やまごぼうの濶葉で包む、晃平の言うところによると、西山の村では、この牛蒡の葉を、餅や団子にね入れて
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
山牛蒡やまごぼうの葉にていたる煙草たばこを、シャと横銜よこぐわえに、ぱっぱっと煙を噴きながら、両腕を頭上に突張つッぱり、トはさみ極込きめこみ、しゃがんで横這よこばいに、ずかりずかりと歩行あるき寄って、与十の潜見すきみする向脛むこうずね
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『ただ墓の上に山牛蒡やまごぼうが生えるばかり』であったら、まあどうでございましょう。