はき)” の例文
今来た入口はいりぐちに、下駄屋と駄菓子屋が向合って、駄菓子屋に、ふかし芋と、でた豌豆えんどうを売るのも、下駄屋の前ならびに、子供のはきものの目立ってあかいのも、ものわびしい。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はき是れどうしても泥棒どろぼうと云ふ看板かんばんを掛て居る樣なものだサア此方へ來いと直樣坂本の自身番へ引上しに出役岡村七兵衞馬籠まごめくら十郎の兩人ひかへ居る前へ久兵衞を引きすゑまづ雜物ざふもつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
數月の間行李の中に鎖されゐたる我晴衣はれぎはとり出されぬ。帽には美しき薔薇の花を揷したり。身のまはりにて、最も怪しげなりしははきものなり。靴とはいへど羅馬のサンダラに近く覺えられき。
見出し其上何者か飛石とびいし草履ざうりにて血のあと迄付置しか不思議ふしぎに存じ私しのはき草履ざうり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
切ければ履替はきかへんとしける中彼の町人は傍により最早もはや日も暮るに近ければ此建場は休まずに行べし草鞋を手早くはき追付おひつかれよと云捨いひすて駕籠を急がせ遣けるにぞ友次郎今直に履替れば暫くまち給へと云を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)