小夜着こよぎ)” の例文
長いからだの上に小夜着こよぎが掛けてある。三四郎は小さな声で、またばあさんに、どうして、そうおそくなったのかと聞いた。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
案外な親切者で、張順の濡れた着物を火にあぶッてくれたり、寒いだろうといって、雑炊鍋ぞうすいなべの物を馳走してくれ、また自分の小夜着こよぎと木枕を出して
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生命いのちがけの情人いろが有って、火水の中でも添わねばならない、けれど、借金のために身抜けが出来ず——以前盗人どろぼうが居直って、白刃しらはを胸へ突きつけた時、小夜着こよぎかぶせて私をかばって
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
伸子は、麻の小夜着こよぎをかけた胸をたたいた。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
長い身躯からだうへ小夜着こよぎが掛けてある。三四郎はちいさな声で、又婆さんに、どうして、さうおそくなつたのかといた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
覗くたびに黒い縁は、すっきりと友禅の小夜着こよぎはすに断ち切っている。写せばそのままの模様画になる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
薄く掛けた友禅ゆうぜん小夜着こよぎには片輪車かたわぐるまを、浮世らしからぬ恰好かっこうに、染め抜いた。上には半分ほど色づいたつたが一面にいかかる。さみしき模様である。動く気色けしきもない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むらさき絹紐リボンは取って捨てた。有るたけは、有るに任せて枕に乱した。今日きょうまでの浮世と思う母は、くしの歯も入れてやらぬと見える。乱るる髪は、純白まっしろ敷布シートにこぼれて、小夜着こよぎえり天鵞絨びろうどつらなる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)