寒夜かんや)” の例文
そしてシンプソン病院を辞去じきょしたのであるが、彼は寒夜かんやの星をあおぎながら、誰にいうともなく、次のようなことをつぶやいたのだった。
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いつか身は不治のやまいに腸と胃とを冒さるるや寒夜かんやに独り火を吹起ふきおこして薬飲む湯をわかす時なぞ親切に世話してくれる女もあらばと思う事もあったが
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それから又二十三日の記に、「此(八)の八を草して黎明れいめいに至る。つひに脱稿せず。たうときものは寒夜かんやの炭。」とあり。なんとなく嬉しきくだりなり。(八)は金色夜叉こんじきやしやの(八)。(八月二十一日)
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
て聴けば寒夜かんや夜霜よじもきらふなりあはれなるかも前のたかむら
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
一、 ひとり寒夜かんやほとぎうつ月 維駒これこま
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
かつては寒夜客来茶当竹罏湯沸火初メテナリ寒夜かんやきゃくきたりて茶を酒につ 竹罏ちくろきてはじめくれないなり〕といへる杜小山としょうざん絶句ぜっくなぞ口ずさみて殊更煎茶せんちゃのにがきを
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)