-
トップ
>
-
富士驛
>
-
ふじえき
此の
時間前後の
汽車は、
六月、
七月だと
國府津でもう
明くなる。
八月の
聲を
聞くと
富士驛で、まだ
些と
待たないと、
東の
空がしらまない。
私は
前年、
身延へ
參つたので
知つて
居る。
それもたゞ
五六人。
病人が
起つた。あとへ
紫がついて
下りたのである。……
鰌の
沼津と
言つた。
雨ふりだし、まだ
眞暗だから
遠慮をしたが、こゝで
紫の
富士驛と
言ひたい、——その
若い
女が
下りた。
鰌の
沼津をやがて
過ぎて、
富士驛で、
人員は、はじめて
動いた。