宿業しゆくごふ)” の例文
私共親子が、惡病に取つかれたのも、前世の宿業しゆくごふとでも申しませう、野山に骨を埋めても、少しも怨むところはございません。
本堂の阿弥陀様ばかりでは此の不思議なおそろしい宿業しゆくごふが除かれぬやうな気がするので、門徒宗でやかましい雑行雑修ざふぎやうざつしゆ禁制きんせいを破つて、ひまがあれば洛中洛外の神社仏寺へ三男をいて参詣した。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
虚共実共つひにしれずして、方々におゐて自害有し人々、一人も及白状、某は不存、かれは存知たると云人もなく、ぬれぎぬを着て旅に赴きぬる事、宿業しゆくごふの程あさましと観念し終にけり
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なしつゝ賊難にかゝりたるは如何なる前世の宿業しゆくごふにやとあきらめ候より外に致し方無之これなきと申立ければ越前守殿假令たとへ弟十兵衞が何と申共一日や二日で歸村きそんの成るべき所にも非らざればしひても止むべきが兄たる者のじやうならずや其方が仕成しなし方甚だ以つて其意を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はじめ家財雜具迄かざいざふぐまでのこすくなに燒失ひ其のみならず引續ひきつゞきて水旱すゐかんなんかゝり難儀のかさなりて年々ふえ年貢ねんぐ未進みしんに當年こそは是非ともに未進の皆納かいなふなすべしと村役人むらやくにんよりうながされ素より篤實とくじつぺんの者なれば十兵衞夫婦はひざ摺寄すりよせ如何なる前世ぜんせ宿業しゆくごふにや追々續く災難さいなんにて斯迄かくまで困窮こんきうの身となりしぞかゝる事のなからん爲鋤鍬すきくはらう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)