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しゆくごふ
爲つゝ賊難に
罹りたるは如何なる前世の
宿業にやと
諦め候より外に致し方
無之と申立ければ越前守殿
假令弟十兵衞が何と申共一日や二日で
歸村の成る
可所にも非らざれば
強ても止むべきが兄たる者の
情ならずや其方が
仕成方甚だ以つて其意を
はじめ
家財雜具迄殘り
少なに燒失ひ其のみならず
引續きて
水旱の
難に
罹り難儀の
重なりて年々
殖る
年貢の
未進に當年こそは是非ともに未進の
皆納なすべしと
村役人より
促され素より
篤實一
遍の者なれば十兵衞夫婦は
膝摺寄如何なる
前世の
宿業にや追々續く
災難にて
斯迄困窮の身となりしぞ
斯る事の
無らん爲
鋤鍬の
勞を