いづく)” の例文
彼等は彫琢てうたくしたる巧句を得べし、然れども妖魅せられざる前の巧句は人工なり、いづくんぞ神霊に動かされたる天工の奇句を咏出する事を得んや。
松島に於て芭蕉翁を読む (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
嗚呼、タルクヰニウス・コルラチニウスが妻なるルクレチア(はづかしめを受けて自殺す、事は羅馬王代の末、紀元前五百九年に在り)は今いづくにか在る。
いづくんぞ知らむ、此日菅茶山は神辺かんなべにあつて易簀えきさくしたのであつた。「病嗝噎、自春及秋漸篤、終不起、実八月十三日也」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あゝ思慮しりよ知識ちしき解悟かいご哲學者てつがくしや自若じゝやくいづくにかると、かれ只管ひたすらおもふて、ぢて、みづか赤面せきめんする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
前よりの心いづくんぞ忘るけん
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
思想と恋愛とは仇讐なるか、いづくんぞ知らむ、恋愛は思想を高潔ならしむる嬭母じぼなるを。
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)