かみ)” の例文
「ほんとだとも、だから、人の亀鑑てほんになる家のおかみさんが、男をこしらえるなんて、ふざけてる、追んだしてしまえと云ってるのだよ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
うそ言うて」と伯母は口開いてカラ/\と打ち笑ひ「わしがお前のおかみさんを忘れていものかの」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「そうか」賢次はふと考えて、「君、いっそおかみさんをもらって、別家したらどうだ、気もちがかわって、いいじゃないか」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「其のおかみさんの名は何と言ふのだの」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
華表を潜りながら拝殿の方へ眼をやった。拝殿の方から嬰児あかんぼを負った漁夫りょうしのおかみさんらしい女が出て来るところであった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そこへ跫音あしおとがして、下のおかみさんが入口のところへ顔を見せた。お媽さんは丼をえたぜんを持って来たところであった。
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
もう日が暮れて燈火がいていた。季和が門口へ往ってを叩くと、瘠せた婆さんが顔を出した。季和はすぐそれがおかみさんの三娘子であろうと思って
蕎麦餅 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そのうちに平生いつもの癖で長くは睡っていられない老婆が眼を覚したところで、おかみさんの室にものの気勢けはいがした。
狐の手帳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彼は下宿のおかみさんにとこをとってもらって寝ながら神中の来るのを待ったが、神中は来ないで翌日になった。
雀が森の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
人をくったような年増女としまおんなの顔、すました女学生の顔、子供をおぶったどっかにきかぬ気の見えるおかみさんのような顔ばかりで、彼の望んでいる顔は見当らなかった。
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「お客さんのおかみさんなら、定めて背のすっきりした、面長の好い容貌きりょうでございましたろう」
立山の亡者宿 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そこには共同井戸になっていて隣のおかみさん達が二三人来て、それが水をまないで頭を集めて話していた。彼はまた例によって井戸端いどばた会議が始まっているだろうと思った。
雀が森の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そこへ下宿のおかみさんが入って来た。お媽は二人の間をへだてるようにして坐った。
草藪の中 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「おかみさんは今朝はよくやすんでますよ、悪いものが離れたかも判りませんよ」
狐の手帳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「や、また逃げやがった、おかみさん、また逃げたのです、起きてくださいよ」
狐の手帳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ちゃぶ台の向いには髪を櫛巻くしまきにした、主翁よりも一まわりも年下に見える目の下に影のあるおかみさんが酒の対手あいてになっていたが、お媽さんは新吉のおりて来るのを待ちかねていたというふうであった。
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彼は下宿へ帰って朝飯あさめしい、学校へ出かける時おかみさんに云った。
雀が森の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と、じょちゅうに戸締の注意する商家のおかみさんもあった。
女賊記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)