)” の例文
むかし唐土もろこし蔡嘉夫さいかふといふ人間ひと、水を避けて南壟なんろうに住す。或夜おおいなる鼠浮び来て、嘉夫がとこほとりに伏しけるを、あわれみて飯を与へしが。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
と朱唇おおい気焔きえんを吐けば、秘密のすでにあらわれたるに心着きて、一身の信用地に委せむことを恐るれども、守銭は意を決するあたわず。辞窮して
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
売国、国賊、——あるいはそういう名が倉地の名に加えられるかもしれない……と思っただけで葉子は怖毛おぞけをふるって、倉地から飛びのこうとする衝動を感じた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「名はといって、十五歳までの寿命をあたえることになった」と、前の者が答えた。
是れ絶對は之をるるを以てなり。逍遙子は是なりといへども之をあがめず。是を以て衆理想のとなることなし。衆理想は皆非なり。是れ絶對はいづれの理想にも掩はれざるを以てなり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
この夜の紙帳しちやうは広くして、我と老侠客と枕を並べて臥せり、屋外の流水、夜の沈むに従ひて音高く、わが遊魂を巻きて、なほ深きいづれかの幻境に流し行きて、われをして睡魔のとならしめず。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)