奮闘ふんとう)” の例文
すなわち金をもうけるのも儲ける道を純白にし、卑怯ひきょうな方法にて儲くれば、これ奮闘ふんとうの敗北なりとみなし、また高き位地を得るにしても
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
なにがへんだといって、つまりぼくはポコちゃんを、かれらの手からとりもどそうとして、ひとりでこうして奮闘ふんとうしていたんだ。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
将門の士は十人にも足らなかつたが、敵が襲ふのを注進した者があつて、急に起つて防ぎ戦つた。将門も奮闘ふんとうした。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
海国日本の快男児九名は真紅しんくのオォル持つ手に血のにじめるがごとき汗をしたたらしつつ必死の奮闘ふんとうを続けてついに敗れた。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
なお奮闘ふんとうの勇を食い得るのは、強烈な嗜好が、他より何物にも犯されない心苑しんえんひらいて、いささかながら自己の天地がそこにあるからであるとみておいてもらいたい。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
その力は、ものすごく強かった。博士はドアを開けさせまいとして、奮闘ふんとうした。ドアのすきからガウンのうでがのびた。博士はのどをめつけられ、把手をはなした。
然ういふ俺も、其毒惡どくあくな空氣の中へ飛込んで奮闘ふんとうしやうといふんだが、武裝ぶそう充分じうぶんかな?
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
心機一転しんきいってんということもあるから、たからかに奮闘ふんとう的な気持ちになれるよう、思い切って生活を革新かくしんするとか、強い刺撃しげきを与えて心境を変化させるとか、妻自身確信かくしんと元気を持って助勢じょせいするがいい。
良人教育十四種 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
これ他なし、幾十年もしくは幾百年幾千年の因襲的いんしゅうてき法則をもって個人の権能を束縛する社会に対して、我と我が天地を造らむとする人は、勢いまず奮闘ふんとうの態度をり侵略の行動に出なければならぬ。
初めて見たる小樽 (新字新仮名) / 石川啄木(著)
クイーン・メリー号が遭難してからこっちのかれのなみだぐましい奮闘ふんとうぶりには、仇敵きゅうてきといえども拍手をおくらずにはいられないだろう。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
決して女子は勇気なくともよいというのではないが、女子の強きところは耐忍たいにんにありとせば、男子の特長は猛進的もうしんてきなる奮闘ふんとうの力にある。このことを論ずるには多言たげんを要せぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかしてこの望みの存する限り、人生の奮闘ふんとうもまた連戦連勝を望むことは出来ぬ。ゆえにはなはだ縁起の悪いことながら、人間はあらかじめ負けた時のかんがえを用意して置かねばならぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)