夫人おくがた)” の例文
そこへの悲報じゃ、夫人おくがたのお驚き、又、百姓町人共のいかり方、この暁方あけがたへかけての騒ぎは、貴様たちに、見せてやりたいくらいなものじゃ
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しき夫人おくがたむかへたまひぬともあいらしきちごうまたまふとものつらさがおもはるゝぞとてほろ/\と打泣うちなけばお八重やへかなしく
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
殿方よりは夫人おくがたの、身分たかいが流行りまする、当節柄の人気には、秋田様が真実の里方でない事を、人も知つて、とやかくの噂を致してゐるとやら。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
マーチノー殿どの、同じく夫人おくがたおよ令孃方むずめごがた。アンセルムはくおなじくうつきしき令妹達いもとごがた。ヸトルーヸオー殿どの後室こうしつ
汗は流るるばかり、ほとんど取乱した形に見えたので、夫人おくがた才子は、さすがに笑止とやおぼしけん
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
明智城の明智十兵衛光秀という者と、いつも御主君の夫人おくがた様にかこち語りをしておいであると、それがしまでが洩れ伺っておる。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ばちはてきめん、我が事も、人の背後しりへに笑ふぞと、知らぬが花の模様もの、着た夫人おくがたの集会も、あながち長屋の女房達に、譲らぬが世の習ひなるべし。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
お妙は、夫人おくがたの背へ涙をはふり落しながら、黒髪を切ると共に、ばさっと、それを握ったまま畳のうえに泣き伏した。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ご予定の行嚢にもつのほか、またぞろ、夫人おくがたさまから先の大臣邸の女家族のかたがたへ、種々くさぐさな贈り物がふえ、そのため執事のしゃという人物とその他の家来二
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「でも。……いえ、そうお聞き遊ばしたなら、さだめし、夫人おくがたさまにも、およろこびなさいましょう」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やや離れて、広縁をうしろにし、じっと、先刻さっきから手をつかえているのは、夫人おくがたしずかまえであった。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ほかでもないが、この四日、頼朝公には夫人おくがた政子まさこの方と御一緒に、鶴ヶ岡に御参詣がある——」
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……折から、横須賀村の御菩提所ごぼだいしょ華蔵院けぞういんには、御先祖法要のために、江戸表から夫人おくがたの富子様に侍臣小林平八郎様がきそうて、先頃から御逗留中ごとうりゅうちゅうでいらせられた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また折には草に伏し、熱砂を這い、もし服さぬ者は、これを斬るぐらいなけんは持っていませんと、到底、列を曳きずッてはいけません。しかるに、夫人おくがたの執事や家来とあっては
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「のみならず、夫人おくがた直々の執事とか、家来などですと、途々みちみち、それがしの命令に服さぬおそれが多分にあります。賊の出没に加え、難行千里、あらゆる難苦を覚悟せねば相成りませぬ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)