大腿部だいたいぶ)” の例文
弥勒みろくに俸給を取りに行った翌日あたりから、脚部きゃくぶ大腿部だいたいぶにかけておびただしく腫気が出た。足も今までの足とは思えぬほどに甲がふくれた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
と、妙子はテーブルの下から脚を出して、寝間着の上からてのひら大腿部だいたいぶを切る真似まねをして見せ、又あわててそこをはらう真似をした。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
どうやら嘔きけはおさまったが、腰から大腿部だいたいぶへかけて、骨がだるいような痛いような、重苦しいいやな気持である。
菊千代抄 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ああそうでしたか、別に骨にもさわらなかったですね、大腿部だいたいぶ——はあそうですか。とにかく若い者は結構ですな。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
左前上膊部ひだりぜんじょうはくぶ、左右臀部でんぶ、右前大腿部だいたいぶ、左後膝部こうしつぶの六ヶ所に、長さ三センチから一センチ位までの、剃刀様の兇器によるものと覚しき軽微な斬り傷があって
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
……伊東はその朝、検視の折、武太郎の無残に切断された右大腿部だいたいぶの内側に銃砲による弾痕だんこんひそかに発見して、急に口をつぐんでしまったことを思い合わせた。
暴風雨に終わった一日 (新字新仮名) / 松本泰(著)
醫者いしやうちからは注射器ちうしやきわたしてくれた。ほか病家びやうか醫者いしや夕刻ゆふこくた。醫者いしやはおしな大腿部だいたいぶしめしたガーゼでぬぐつてぎつとにくつまげてはりをぷつりとした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
フワリと立つことが出来たが、それは胴だけの高さだった。大腿部だいたいぶから下が切断されている!
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
此処ここの院長が自分の手に負えなくなったので、神戸で一番名声の高い外科医に来て貰ったところ、大腿部だいたいぶから以下を切断しなければならないのだけれども
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
おと年の冬、いや去年の二月ですね、一人の医者は大腿部だいたいぶから切断するように云いましたが、親たちが嫌いまして、他の医者からずっと治療を受けていました。しかしどうも納得がいかないんです。
四年間 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かれの両側に巨大な大腿部だいたいぶがあった。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)