大形おおがた)” の例文
としは二十八でありますが至って賢い男、大形おおがた縮緬ちりめん単衣ひとえものの上に黒縮緬の羽織を着て大きな鎖付の烟草入たばこいれを握り、頭は櫓落やぐらおとしというあたま
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こは甚だしくまげ大形おおがたなるを好みしこの時代一般の風俗に基因したるものにして決して画家一個人の企てに因りたるものとはいひがたし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と、えいちゃんは、いまのからると、大形おおがたな、そして、ずれのした、一せん銅貨どうか裏表うらおもてかえしながら、さもなつかしそうにながめていました。
一銭銅貨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
座長がまっさきにのりかゝつて、ぎよつとした。三艘さんぞうのうちの、一番大形おおがたに見える真中の船であつた。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
青い布をかけたテーブルの上に、大形おおがたの鏡がおいてあるへやが彼女の泣き室なのであった。彼女は孤独でいる時は、その鏡のなかへ具合よく写ってくる壁上にかけた故人の写真を見ては泣いている。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
菱川奥村及び鳥居派の墨摺絵また丹絵にはすこぶ大形おおがたの紙を用ゐたる大判のものありしが、二色摺(紅絵)に至りて浮世絵板画はようやく二種の定まりたる形式を取りぬ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
屑屋くずやにな大形おおがた鉄砲笊てっぽうざるに、あまつさへ竹のひろひばしをスクと立てたまゝなのであつた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いや、ぼくの子供こども時分じぶんには、べいごまなどというようなものはなかった。もっと大形おおがたごまか、鉄胴てつどうのはまったこまだった。鉄胴てつどうのこまには、ごまは、どうしてもかなわなかったものだ。
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
国貞国芳らの描ける婦女は春信の女の如く眠気ねむげならず、歌麿の女の如く大形おおがたまげに大形のくしをささず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
……旦那、おらが時計は、日に二回、東京放送局の時報に合わせるから、一りんも間違わねえぞ、と大分大形おおがたなのを出して威張る。それを、どうこうと、申すわけではありませんけれども。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)