ばん)” の例文
「こうして、あなたと、三日三ばんおりましたが、これ以上いっしょにおりますと、災があります、これからどうか帰ってください」
黄金の枕 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「さあ、陰気な話はもう中止だ。こんなばんは、ランプでも明るくして愉快に話すのだ。ここは横須賀よりまた暖かいね、もうこんなに山桜が咲いたな」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
父の壮太郎はよく眠っていて起きそうもなかったので、敦夫は旅の疲れもあり、寂しがる妹と一緒の部屋で早くから寝台ベッドへ入った。寝苦しいひとばんだった。
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一箇月ばかり前のばんに私がお客さんと舟で難波橋なにわばしの下で涼んで居たら、橋の上からお皿を投げて、丁度ちょうど私の三味線にあたって裏表うらおもての皮を打抜うちぬきましたが、本当に危ない事で
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
重右め、不具かたはだもんだで、姫つ子が何うしても承知しねえ、二ばん、三ばん、五ばんほど続けて行つて、姫つ子を幾人も変へて見たが、何奴どいつも、此奴も厭だアつてぬかして言ふ事を聞かねえだ。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
ほんとに先日いつかばんだって吃驚びっくりしたよ。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
三杯たべるともうのどに通らなかった、そしてともかくも温まり空腹感がおさまると、こんどは二日三ばんの疲労がいっぺんにでて、どうにも起きていられなくなり
蜆谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
四月十八日のばんでした、悴が少しいい方でやすんでいますから、おんななぞもみんな寝せまして、私は悴の枕もとに、行燈あんどうの光で少し縫い物をしていますと、ついうとうといたしましてね。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)